アントラセン修飾DNAコンジュゲート光化学ライゲーション及びSNP解析への応用



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 それぞれ逆末端にアントラセンを導入した2種のコンジュゲートはターゲットに結合した際にその互いのアントラセン部位が対峙(スタッキング)するように設計してある。複合体形成後、光を照射すると相補的なDNAが加えられたサンプルにおいてのみコンジュゲート同士が連結された二量化生成物が生じた(左図)。1、2、9位とアントラセンの置換位置によって反応性はかなり異なり、1、2位置換体では反応は数秒ときわめて速く進行する。また、[4π-4π]型の光架橋反応であるので核酸塩基とのクロスカップリングもない。さらに、二本鎖を形成したそれぞれの鎖の末端同士、三本鎖など、リガーゼが基質とできない構造においても高効率で反応することが確認できた。

 熱安定性の差(1)と局所構造の乱れ(2)を利用する以下の2つの方法でSNP検出の可能性を検討した。すなわち、(1)ターゲットとの間に形成する二本鎖構造の、ミスマッチに基づく熱安定性の相対的な差を大きくするために、7塩基の短いコンジュゲートを用いた系(コンジュゲートのon/offを利用する)では、competitor(コンジュゲートの相補鎖)共存下、適当な温度条件を選ぶことでSNPをデジタル的に識別できることがわかった(右図)。また、(2)15塩基の長いコンジュゲートを用いてミスマッチの有無に関わらず二本鎖が充分に安定な条件下光照射を行った。ライゲーションの反応性はミスマッチの位置、種類によって大きく変化することがわかった。この手法においては二本鎖構造中の局所的な構造の乱れを利用している。ミスマッチが反応サイト(コンジュゲート末端、アントラセン側)に近いときには、反応性を著しく低下させることができた。

 いずれも10秒以下の光照射でSNPの識別が可能であり、従来の酵素反応に要する時間と比較すると大幅な短縮である。後者の方法で、さらにシグナルのコントラストを上げることができれば、厳密な温度設定が必要ないのでDNAチップなどのように多様な塩基配列を一度に処理しなくてはならない系において非常に有効な検出手段となる。同反応は二本鎖構造に限定されず、事実上、両アントラセン環の距離を考慮してやれば良いことがわかってきたため、核酸基体に限らずタンパクなどの他の様々な生体高分子(超分子)上で行うことが可能と考えている。



アントラセン修飾DNAコンジュゲートの可逆的光環化



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 鏡面対称なピリミジン配列のDNAの両末端にアントラセンを修飾した。このコンジュゲートは相補的なプリンシークエンスと二分子三本鎖構造を形成する。生じた複合体に光を照射すると両末端のアントラセン同士が架橋され、結果的にコンジュゲートが環化する。反応は10秒以下の照射(366 nm, LEDランプ)で定量的に進行した。この環化反応はプリン鎖のシークエンスに依存するが、その特異性は上記二本鎖構造において観察されたものよりも高いことがわかった。二分子三本鎖構造においては、ひとつのプリン鎖をピリミジン鎖のコンジュゲートが折り畳まれたかたちでU字型をとって認識する。すなわち、プリン鎖をWatson-CrickHoogsteen結合により両側から二重に認識するために、より短いターゲットでも高い特異性により強く結合するためである。また、生成物である環状コンジュゲートは、エントロピー効果により(pre-organization効果)、ターゲットであるプリンシークエンスとより強く結合することがわかった。よって、この反応は、より高いアフィニティーを有するDNAリガンドを簡便に(しかも、可逆的に)作製する手法と見做すこともできる。